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本発表について
この内容は 、2012年に盛岡で開催された日本矯正歯科学会大会において、院長が発表したものです。
当院で小児の矯正治療で使用している機能的矯正装置の治療により、よく咬めるようになり、唾液分泌量が増えるのではないか、と考え行った研究発表です。
唾液は、消化・嚥下だけでなく、口の中の保護、特にむし歯の予防効果があるため、量が多い方が良いと考えられています。
むし歯の予防効果は、永久歯に生え変わる時期が最も大きいため、早めに唾液量が増えればより良いと考えられます。
結果として、小児での機能的矯正装置使用前後で唾液分泌の量が増えていることが確認できました。
機能的矯正装置の効果により、早い段階から、かみ合わせだけでなく、口の中の環境も良くなることが考えられることが、数字で確認できたことは、有意義なことと思います。
* 機能的矯正装置による治療につきましては、「
こどもの矯正治療」に簡単にまとめてあります。
* 現在(2015年)は、残念ながら、使用していた唾液検査製品の販売終了により、唾液検査の比較検討ができなくなっています。初診検査時の唾液検査は別製品にて現在も行っていますので、個人の唾液の性状については、現在も確認し、治療に入っています。
以下発表内容です。
目的
唾液は、口腔内において消化、洗浄、嚥下、緩衝能の維持によるう蝕予防等、様々な重要な役割を担っている。
唾液分泌量は、その指標として重要な要素である。
機能的矯正装置は、主に成長発達期の顎発達、筋機能の不調和およびそれに伴う不正咬合を改善するために用いられる矯正装置である。
小児において機能的矯正装置を用いて顎発達、筋機能の不調和およびそれに伴う不正咬合の改善を行った場合、その効果により唾液分泌量が増えるのではないか、と考えた。
本研究の目的は、小児での機能的矯正装置による矯正治療前後における唾液分泌量の変化について検討を行うことである。
方法
当院にて、可撤式の機能的矯正装置により矯正治療を行った小児33名(男児15名、女児18名)を対象とした。
唾液分泌量の計測には、オーラルテスター(株式会社トクヤマデンタル)を使用した。
初診検査時(平均年齢8.8±1.7歳)と機能的矯正装置使用終了後(平均年齢11.2±1.9歳)の2回、専用のガムを5分間噛み、口腔内に溜まった唾液を唾液計量カップに吐き出し、唾液量の計測を行った。
結果
初診検査時(平均年齢8.8±1.7歳)の唾液分泌量は5.5±2.7ml、機能的矯正装置使用終了後(平均年齢11.2±1.9歳)の唾液分泌量は7.5±3.7mlで、機能的矯正装置による矯正治療前後において唾液分泌量の増加が認められた。
Wilcoxonの符号順位検定を用いて、両群間の比較を行ったところ、有意差(p<0.001)が認められた。
また、唾液分泌量過少者(唾液分泌量3.5ml以下)は、初診検査時7名(男児2名、女児5名)から機能的矯正装置使用終了後3名(女児3名)に減少が認められた。
考察
小児の唾液分泌量の過少は、永久歯萌出時期にもあたるこの時期における、カリエスリスクを含めた口腔環境の悪化の原因となるものと考えられる。
本結果は、小児での機能的矯正装置による矯正歯科治療が、唾液分泌量の増加という要素により、口腔環境の改善に効果がある可能性を示唆した。
しかし、成長変化による影響などにも考慮が必要と考えられることから、今後検討を重ねる必要がある。
結論
小児での機能的矯正装置による矯正治療前後において、唾液分泌量の増加が認められた。